日本におけるがん征圧の中核拠点である、独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター予防研究部から、「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果として、米飯摂取と糖尿病との関連について発表がありました。特に米飯摂取量によって女性で糖尿病発症のリスクが上昇する項目が、報道機関で大きく取り上げられました。
今回の疫学的研究報告は、「ご飯摂取量」と「糖尿病」の相関があったということです。
相関があるということは、糖尿病罹患(りかん:病気にかかること)率とご飯摂取量に因果関係があるということではありません。「原因の一つとして可能性がある」と解釈するべきです。
糖尿病とお米との関連で問題になるのが、精白時にクロムが失われる点です。クロム(Cr)は微量元素のミネラルです。お米には、胚芽部分やヌカ部分に、クロムが多く含まれています。
現代の日本の食生活全般が、精製した加工食品に支えられている一面があります。主食である白米しかり、おやつ類も含まれますが、非常に精製したものが多いのでビタミン・ミネラルの不足が指摘されています。かと言って、パン食がいいかというとそうでもありません。小麦も、お米同様、精製して白くすると著しくミネラルのクロムが減ってしまいます。
クロムは、不足すると、糖尿病と直結するミネラルであることが分かっています。インスリンは体内吸収されたブドウ糖の代謝に必要なホルモンです。クロムはこのインスリンの働きに不可欠なミネラルであることが知られています。
クロム不足で糖尿病が増えた事例がアメリカのある街であります。
精製した白い砂糖を使うようになったら、急に糖尿病が増えた。よく調べてみたら、それまで使っていた砂糖が、色のついたあまり精製されていない砂糖で、クロムが含まれていました。街の食料品店が砂糖を真っ白な精製砂糖に変えてから、糖尿病が増えたということが分かりました。その街の周辺地域の土壌には、もともとクロムがほとんどなく、そこで採られた作物にもクロムがありませんでした。当然、その作物を食べている牛のミルクにもクロムが少なくなります。その街に限って言えば、色のついた粗製砂糖がクロムの貴重な補給源だったわけです。たまたま街の食料品店が販売していた粗製砂糖が、その街の住民に、クロムを供給していたのです。食料品店が何も知らずに白い精製砂糖に変えたことから、その街でクロム欠病症による糖尿病が激増したというわけです。
上の事例からも、私たちにとってクロムは非常に重要なミネラル栄養素であることが分かります。「穀類をあまり精製するな」という論拠の一つは食物繊維ですが、クロムという元素も非常に少なくなってしまう点も挙げられます。欧米で言われている「パンは白くしないで、黒いパンを食べましょう」という運動にも同じ理由があります。日本人の食事摂取基準(栄養素の標準的な摂り方)では、日本人には非常に糖尿病罹患者が多いことを踏まえて、新しくクロムという元素が入りました。
胚芽に多いクロムは、精白米にすると失われてしまいます。胚芽米は、今までもっぱらビタミンを残すための精米加工法とされてきました。もう一つの側面として、クロムを残すための精米加工でもあり、糖尿病予防の観点から注目されます。胚芽米は、白米(普通の精白米)よりも、胚芽の部分に必要なミネラルとビタミンを豊富に含んでいます。
今回の研究報告では「糖尿病予防には、日常の身体活動量を増やすとともに、雑穀を取り入れるなどの米飯摂取後の血糖上昇を抑えるような工夫も大切であると考えられます。」と記載しています。
ここで言えることは『お米を食べてはいけない』ということではなく、『食べる時に色々気をつけてやりなさい』ということです。研究報告では、雑穀と組み合わせるなどの適切な工夫を呼びかけています。
雑穀との組み合わせは、まさしく胚芽米そのものを食べることを意味します。雑穀と精米をすでに組み合わせ済みのものが胚芽米である、とも言えるしょう。胚芽米自体は雑穀ではありませんが、雑穀としての特徴をそなえていると言ってもいいと思います。
雑穀の特徴とは何かというと、食物繊維のほかにビタミン・ミネラルをまんべんなく含んでいることです。胚芽米の方が、よりお米の持っている丸ごとの機能を活かした食べ方、本来のお米の食べ方に近いということが言えるでしょう。
「お米を食べるなら7分づき米や玄米でいいだろう」という意見もあるでしょうが、まずくて食べづらいというハードルが懸念されます。嗜好的にどこで折り合うかという時に、今の胚芽米は、白米同然の美味しさを保ちつつ玄米あるいは雑穀類が持っている微量のミネラル栄養素、特にクロムなど、を保持しています。
白いご飯もいいけど、お米の持っている機能を上手に活かして食べる。
お米を上手に食べるということに配慮して、胚芽米をお薦めします。